先日、友人K君が僕の家に泊まりに来た。
彼との出会いは18の時、当時通っていた学校の前の席が彼だった。かなり捻くれていた僕はクラスに馴染めるはずもなく、そして、平気でクラスメートのことをシカトしていた。そんな僕に面白がって近づいてきた彼もかなり変わった人間なのだろう。
ある日、K君が「何か面白い小説ない?」と聞いてきたので、僕がコインロッカーベイビーズを貸してあげると、「ヤベー、面白い。人生の一冊にするわ。」とひどく感銘しながら本を返してきた。
学校を卒業して1年後、21歳に僕は上京してきた。千葉の人間はほとんどの場合、西東京に憧れを持っており、僕もそんな訳で何となく久我山で一人暮らしをすることにした。
上京して間もなくK君が久々に連絡をくれた。「東京来たんでしょ?遊ぼうよ。どこ住んでんの?」久我山と答える。「え?俺、三鷹台だよ!近いじゃん!」そのまま話を進めていくと僕と彼の家は500mくらいの距離だった。ドラマ小説レベルの偶然は現実でも起こりうるのだなぁと再認識させられる出来事です。
それから僕等は頻繁に遊ぶようになった。吉祥寺でご飯を食べ、井の頭公園を抜けて、二人でよく歩いて家まで帰った。
ある日、いつものように井の頭公園を彼と歩いていると、「これ見てくれ。」そう言って、左手首を僕に見せてきた。
『Datura』
刺青が入っていた。「こないだタイで彫ってもらった。」そう笑いながら僕に言ってきた。ダチュラとはあの時僕が貸した小説の台詞である。
人を片っ端から殺したくなったらこのおまじないを唱えるんだ、効くよ、いいか覚えろよ、ダチュラ、ダチュラだ。――ガゼル
めちゃくちゃダサいその刺青を見て僕は笑い転げた。ダチュラ刺青事件は、僕が人生で笑ったTOP10に入る出来事だ。
とんでもなくダサいその刺青に彼の人の良さが表れていて彼のことが大好きになった。
先日、彼が僕の家に来る前、あの頃みたいに二人でご飯を食べた。彼が言う。「来年辺り、もしかしたら結婚するかもしれない。」人生のエンドロール見えたじゃん。もう君もお終いだね、と冗談で言う僕。「本当だよ、もうエンドロール見えたよ。」と笑いながら彼が言った。
ダチュラ消えた?見せてよ。左手首を久しぶりに見せてもらった。「消える訳ねぇーじゃん、相変わらずダサいでしょ?」相変わらずダサいねと返した。
幸せそうな彼の顔は、とても憎らしかった。けれど、久々に見せてもらったダチュラは、何故だか少し格好良く見えた。
友人の成長に僕も負けてられないなぁと思う、刺激的な1日になりました。
H31.3.26 SHOHEI KURUMAI.